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スタッフブログ 買取日記

2019/08/19

文化史・社会学書籍買取させて頂きました

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今回は社会学を中心に、文化史や哲学、地政学等の書籍を多数買取させていただきました。以下に良い査定額をお付けできた本をご紹介します。

 

「国土論」

「新興民主主義大国インドネシア―ユドヨノ政権の10年とジョコウィ大統領の誕生 (アジ研選書)

「分散する身体―エスノメソドロジー的相互行為分析の展開」

「図説 ヨーロッパ怪物文化誌事典」「出産と生殖観の歴史」

「家族に介入する社会―近代家族と国家の管理装置」

「アイデンティティ・ゲーム―存在証明の社会学」

「共に生きる多民族・多文化社会における対話 (現代社会学ライブラリー3)

「大都市の共同生活―マンション・団地の社会学 (都市研究叢書)

「日本近代都市論―東京 1868~1923

「都市化の社会学理論―シカゴ学派からの展開 (都市社会学研究叢書 1)

「町内会の研究」

「「世界都市」東京の構造転換―都市リストラクチュアリングの社会学 (社会学シリーズ)

「地域共同管理の社会学」

「方法としてのフィールドノート―現地取材から物語作成まで」

「クローゼットの認識論―セクシュアリティの20世紀」

「老いの比較家族史 (シリーズ家族史 (5))

 

などなど。その中で、個人的に気になった本がこちら、

 

「アイデンティティ・ゲーム―存在証明の社会学」

 

 です。

 

19929月初版なので、もう四半世紀以上前の本になるわけですが、汚れもほとんどなく、使用感も少ない状態でした。他の本も非常に丁寧に扱われていたことが分かりました。

さて、中身ですが、「アイデンティティ」というワードを聞くと、どのようなジャンルの本だと想像されますか?私は、あくまでイメージですが、心理学とか、自己啓発系の少しばかり個人的なヒーリングに重きを置いた本を想像してしまうのですが、こちらの本は少し違います。それが分かるのが、副題の部分。「存在証明の社会学」です。そう、「社会学」の観点からもアイデンティティについて述べているのです。

こちらの本では、アイデンティティ問題を生じそうな項目(所属、能力、関係)について、それぞれエスニシティ (本書では第2章目)、障害 (同第3章目)、ヒーリング・ビジネス(同第4章目)を例に提示する部分が中心部となっています。最後に第5章としてアイデンティティ問題を抱えた人々の政治参加について述べて、まとめとなっております。

上記のような例示は、確かにアイデンティティに危機を抱きそうな項目であるとは想像はできますが、個人的には第3章の「障害」、第4章の「ヒーリング・ビジネス(本文では主に「気づきのセミナー」となっています)を持ってくるあたりが面白いチョイスだと思いました。この本が出版された90年代初めには、まだ「気づきのセミナー」とか、「自己啓発セミナー」なんかが大流行していた時期ですから、当時としては更に目を引いたのかも知れませんね。筆者が参加したセミナーの具体的プログラムの一部も紹介されていて、興味深かったです。

3章の「障害」のチョイスについても、筆者自身が15歳で全盲になったという中途視覚障害者であるという点も影響していると思います。珍しいことに、奥付には本書を「視覚障害者がより広く利用できるようテープ録音すること、点訳すること、拡大コピーすることを許可」する旨がわざわざ記されていますし、あとがきの部分にも本書を視覚障害のある筆者がどのように筆記したのかが述べられており、少なからず筆者の「障害者としてのアイデンティティ」がこの問題を考える契機を与えていると推測できます。

2章のエスニシティや第5章の政治参加の部分は社会学的要素が濃いところですが、全体的には、やはり「アイデンティティ」という主題自体を扱おうと思う時点で筆自身もアイデンティティに縛られざるを得ないのかな、と思えます。そもそも、筆者は最初の章で「人は存在証明に躍起になる動物だ」ということがこの本の主題であると書いており、この本を執筆することが何よりの著者のアイデンティティ証明であるという証明になっているのが、ちょっと皮肉めいていると感じました。

 

アイデンティティ問題に直面したとき「じゃあ、どうすればいいいの?」という疑問が湧くのは自然なことだと思いますが、本書を読んでいると、それに対する明瞭な答えは見つかりません。「逆にどうにもできないよ」というのが結論で、「それでいいじゃない」というのも答えなのかなと私は感じましたが、他の方はどう感じるでしょうか。感想をシェアしてみたいものです。

 

今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!

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