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スタッフブログ 買取日記

2019/09/27

社会学書籍買取いたしました

今回は社会学関連の書籍を多く買取させていただきました。一口に社会学といっても政治学的なものや、メディア論や史学に近いものまであります。以下に良い査定額をお付けできた本のリストをご紹介いたしますが、こちらをご覧になればそのバリエーションの豊かさが分かっていただけると思います。

「3.11 慟哭の記録―71人が体感した大津波・原発・巨大地震」
「南アジアの文化と社会を読み解く (東アジア研究所講座)」
「天皇制と進化論」「愛と欲望のナチズム (講談社選書メチエ)」
「洞窟のなかの心」「ディズニーランド化する社会で希望はいかに語りうるか」
「戦時婦人雑誌の広告メディア論 (越境する近代)」
「水俣の記憶を紡ぐ:響き合うモノと語りの歴史人類学」
「戦争社会学の構想 ―制度・体験・メディア―」
「魅惑する帝国―政治の美学化とナチズム」「近代日本における女同士の親密な関係」
「近代日本と小笠原諸島―移動民の島々と帝国」
「洞窟へ―心とイメージのアルケオロジー」
「インドネシアのイスラーム改革主義運動:アラブ人コミュニティの教育活動と社会統合」
「奄美文化の近現代史―生成・発展の地域メディア学―」
「メディアの公共性:転換期における公共放送」
「質的調査の方法〔第2版〕: 都市・文化・メディアの感じ方」
「森羅万象のささやき―民俗宗教研究の諸相」「科学技術とリスクの社会学」
「魂のレイヤー―社会システムから心身問題へ」

などなど。

 どれもとても読んでみたい本ばかりなので、気になる本のピックアップが大変だったのですが、その中から選んだ本がこちら。
「洞窟のなかの心」
 です。
少し前にこちらのスタッフブログで紹介させていただいた「名画と解剖学 『マダムX』にはなぜ鎖骨がないのか?」 に、「手の洞窟」という作品が紹介されておりまして、そちらを見てから洞窟芸術という分野が妙に気になっていたのです。こちらの本を見て、「キター!!」と思わず心の中で叫んでしまいました。本が本を呼ぶってありますよね。
「~『マダムX』には~」で紹介されていた洞窟芸術は一番古い部分で9000年前に制作されたものでした。それでも随分古いですが、今回ご紹介する「洞窟のなかの心」で取り扱う洞窟芸術は後期旧石器時代のもの、特にネアンデルタール人と現生人類とが共存していた時代からの移行期にあたる4万5千年前から3万5千年前ほどのものを中心に取り扱っています。アルタミラの洞窟壁画といえば、歴史の教科書や資料集に載っていた有名なものですので、なんとなくイメージが湧きますでしょうか?
事例によってはそれよりも古く、既に芸術性が認められる遺物についても触れられるのですが、もはやスケールが大き過ぎて時間の感覚が麻痺してきます。
本書ではそういったヨーロッパに見られる後期旧石器時代の遺物(とくに洞窟壁画)から、いつ、どうやって人類に芸術―心的イメージを表現すること―が芽生えたのかを考察しています。本書の写真をご覧になると、帯に「脳内神経回路」「シャーマニズム」「社会形成」といった言葉が並んでいますが、端的に言えばこちらが著者デヴィッド・ルイス=ウィリアムズがその発生の契機となったと考えるキーワードとなっています。そのワードの少なさは意外ですが、どれもが一筋縄でいかない深く、多角的で他分野をまたがる議論が必要なものばかりであり、著者の慎重なロジックの進め方(折に触れて著者の仮説が西ヨーロッパにおけるものに限定されることや、これまでの研究で構築された仮説や解釈に例外や議論の余地が残されていることに釘を刺しています。)もあり、本書は全部で550ページほどの大作となっております。
それ故、読破はなかなか難しいかと思いますが、第4章、5章は南部アフリカや北アメリカ西部の先住民族のケーススタディとなっており、後期旧石器芸術の直接の考察ではありませんが、文化人類学や言語研究に興味のある方も独立の章として楽しめるかと思います。
ホモ・サピエンスは前述の移行期以前にも存在したのに、この時期に(あくまで西ヨーロッパにおける)芸術の萌芽の爆発とも言えるものがあるのは何故なのか?最初は「そんなもの、古代人の脳ミソでも覗かなきゃ分からないよ!」と著者の批判するところの「不可知論的」で「懐疑的」な目線で読み始めたのですが、「芸術」と「社会形成」に関連性を見る視点は目からウロコでした。その他にも時代や場所を超えて、現生人類に普遍的な神経回路に言及する箇所などは大変面白かったです。
こちらの本の原書は2002年に刊行(本邦訳版は2012年発行)されているので、すでに17年が経過していることになります。その間にも新たな発見が続々とあったはずで、本書の仮説・解釈にも突っ込みどころが見つかると思います。逆に新たな発見から裏付けられた本書の先見性に感嘆するもよし、芸術の秋にその萌芽を探求する入口(ちょっと重めですが)として、本書にトライしてみてはいかがでしょうか?

今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!

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