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スタッフブログ 買取日記

2020/08/04

経済・経営・政治学等の書籍の買取

今回は経済・経営・政治学等の書籍を中心に買取させていただきました。
以下に特に良い査定額をお付けできたものを紹介させていただきます。

「帝国に生きた少女たち:京城第一公立高等女学校生の植民地経験」
「国際ビジネス 2: 経営環境と金融システム」
「モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質 (経済産業研究所・経済政策レビュー)」
「ラテン・アメリカ社会科学ハンドブック」
「国際ビジネス3」
「ウォール・ストリート支配の政治経済学」
「コア・テキスト国際経済学 (ライブラリ経済学コア・テキスト&最先端)」
「原子力発電と会計制度」
「美味礼讃」
「クリエイティブ都市経済論―地域活性化の条件」
「岩波講座 現代思想〈4〉言語論的転回」
「セイ法則体系―マルクス理論の性格とその現代経済学体系への位置づけ (久留米大学経済叢書)」
「進化する政治経済学」
などなど。

「帝国に生きた少女たち:京城第一公立高等女学校生の植民地経験」は、日本が大戦中に植民地化した朝鮮半島での植民第二世の少女たちにインタビューをしてまとめたものになります。経済経の書籍の中で異彩を放っていたこともあり、気になった一冊です。

他のものとやや異なるといえば、「美味礼讃」もそうですね。著者のブリア=サヴァランはチーズの名前やケーキの名前の由来となった美食家として有名です。

ですが、今回ピックアップした一冊はこちら
「原子力発電と会計制度」(2016年初版)著:金森 絵里(2016年現在 立命館大学経営学部教授)


です。

本書では、原子力発電という一般的な企業にはない特殊性、つまり強い社会性が存在するがゆえの事業会計がもつ特徴、問題点について言及していきます。

さて、こちらの本、カバーの巻頭側折返しの最初が「現在の原発会計制度」という言葉で始まるのですが、「原発会計制度」とは原発に係る会計全般を著者がそう便宜的に呼ぶもので、実際そういう名称の会計があるわけではありません。

原発会計制度に限らず、会計制度の意義について本書は「「事業の言語(language of business)」といわれる。 ーー略ーーー 会計は言語の一種である」と述べていますが、これは上手い喩え方だと思いました。

会計制度といわれると、馴染みのない人にとっては温度を持たない数字の羅列な感じがしませんか?例えば、本書にも登場する「原発の廃炉会計」ですが、実際に廃炉にするのは変わらないのに、会計上の処理によって廃炉の進捗状況に影響が出ます。まるで、実態を伴わない数字に操られているようです。しかし、それらも「言葉」として受け取ることで、その背後にある事業の運営者たちも見えてくるというか、急に意味を持ったものに変わる気がするのです。

著者の金森氏はこの道の第一人者であるようで、「自然エネルギー財団」のHPにおいて電気事業会計、原発会計の意義・現行制度の問題点の指摘を行っています。本書でもベースとなる視点が表れていると思いますので、以下に抜粋します。

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つまり、電気事業会計の特殊性とは、一般の企業会計よりもはるかに強い社会性を有するということである。社会性を有するということは、企業をめぐるあらゆる利害関係者と会計情報をつうじて意思疎通をはかり、公益のために絶えず改善努力をする必要があるということである。

ーーー中略ーーーーー
 現在の財務会計ワーキンググループの議論では、電気事業の特殊性を悪用して、一般的な感覚とはかけ離れた制度を構築しようとしている。今一度、原発会計の特殊性とは何かというところに立ち返り、丁寧に議論を進めるべきである。

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そして、また喩えを用いて著者がいうには、原子力発電に関わる会計については「「このバラは赤い」というところから議論が始まるが、本当にそのバラは赤いのか、疑うことからしなければならない=その会計情報が、どのように計算され、提供されているのか、といったことを吟味することが不可欠」なのだそうです。ここでまた、会計を理解するには行間を読む必要がある、すなわち、「言語の一種」という喩えがまた活きてきます。

また、「はじめに」で端的に原発会計制度の問題点を指摘しています。それは「「会計制度を基礎とした電気料金」という本来の枠組みが、「電気料金を前提とした会計制度」という思考様式へと逆転している」ことです。会計制度を読み解くことで、利用者の電気料金に依存した事業者側の思惑まで透けて見えるとは。奥が深いです。

以上、いろいろ書きましたが、「まえがき」から分かった部分をまとめただけで、こんな感じです。著者が 喩えを交えながら論点をわかりやすくまとめているところが大きいと思いますが、本文のエッセンスは掴めたような気がします。全体をじっくり読むと、より問題点と著者の主張したいことがはっきりとわかりそうですね。うーん、この本、自分用に取り置きしてガッツリ読みたいです。(笑)

2011年3月11日、それに続く福島第一原発のメルトダウン以降、原発というものにぐっと注目が集まりましたが、このコロナ禍の影響か、または単純に記憶の風化によってか、一時期ほど原発が話題にのぼらなくなりました。しかし、今一度、生活には欠かせない電気のこと、これから議論の余地がまだまだある原発のこと、会計制度を深読みすることで勉強してみませんか?

今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!

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