2024/08/23
社会学等の書籍買取【147冊 13,475円】
買取日記ジャンル
今回は社会学等の書籍をたくさん買い取らせていただきました。
グローバル化のもたらしたもの
社会学の守備範囲は非常に広いかと思うのですが、今回は大きく捉えて「グローバリゼーション(グローバル化)」というキーワードを持った書籍が多かったように思います。
ただ、そのグローバリゼーション自体も経済的な側面を切り取って論じるもの、人の移動を歴史的な変遷の中で見るもの、人の移動の結果促された文化交流のあり方をみるもの・・・など、その捉え方は様々ではあります。
今回はそのようなテーマを持った本の中でも、2000年前後に刊行された書籍が多かった印象です。(本記事の一番最後に今回の買取の中で特に良い買取額を付けさせていただいた書籍名をそのISBNや出版年と共に一覧にして掲載しておりますので、ご参照ください。)
1900年代にはすでに地球のいたるところが地続きとなっていた感はありますが、2000年に入ってからはそれがさらに深化した、と言えるでしょう。
例えば、ぱっと思いつくところで
①貿易や企業の海外進出などによる相互関係の深化=経済的な深化
②インターネットの普及やSNSなどによる情報のやりとりの加速=文化的な深化
などが考えられます。
上記①、②に関連して、当然、生身の人間の移動を伴うことも多く、人と人との交流の中で自身のエスニック・アイデンティティや他者との境界を自覚し、結果、多様性を尊重していこうとするムーブメントに繋がった部分もあるでしょう。また、世界が広くつながることでモノや富が循環し私たちの生活に彩りが加わったことも大きいと思います。(だからこそ、私たちのような古本屋にも行ったことのないような国の本が豊富に入ってくるのですから、ありがたいことです。)
グローバリゼーションは幸せをもたらすのか?
ただ、上に書いたような肯定的な変化=「経済的な富をもたらすもの」「人々の交流を促進するもの」はグローバリゼーションのごく限られた側面です。
実際のところは、人の経済活動が活発化することにより環境破壊が進み、富が十分に分配されない地域ではより格差が進み、人と人との軋轢によって悲惨な衝突があちこちで起こるなど、負の側面の方が大きくクローズアップされつつあります。
今回、お売りいただいた書籍の大半は、そういったグローバリゼーションの闇にスポットを当て、諸問題について切り込んでいく内容のものでした。
『グローバリゼーションと暴力―マイノリティーの恐怖』アルジュン・アパドゥライ 著,藤倉 達郎 訳,2010,世界思想社
例えば、上の書籍はそのような問題意識がストレートに取り扱われています。
また、人と人、国と国との軋轢が生む戦争がひとたび生じると、弱い者が難民となって行き場を失います。そのような「難民」や「亡命」、「移民」に焦点を当てた本などもありました。
『紛争と難民 緒方貞子の回想』緒方 貞子 (著),2006,集英社
日本人初の国連難民高等弁務官として1991年から約10年間の任期を務めた緒方氏。東西冷戦終結というパラダイムシフトを迎えたこの時期は、民族や宗教の違いが原因となった紛争が各地で多く発生してきた時期でもありました。本書ではそのような問題が発生した地域の中でも特にイラク北部、バルカン地域、アフリカ大湖地域、アフガニスタンの四地域に焦点を絞り記述されています。
『ノーホエア・マン』 アレクサンダル・ヘモン 著,岩本 正恵 訳,2004,白水社
本作はユーゴ紛争から逃れた青年を描いた長編小説。著者自身もボスニアのサライェボ生まれ。アメリカ留学中にサライェボが包囲されてしまい、帰国ができなくなってしまったという亡命者としての経験を持ちます。2002年、全米批評家協会賞最終候補作。
『移動から場所を問う: 現代移民研究の課題』伊豫谷 登士翁 編、2007、有信堂高文社
2004年に4日間にわたり開催されたシンポジウム「移動から空間を捉える」の成果を基にまとめられたのが本書。移民研究の目的は「一時的な人の移動=移民は逸脱状態であり、それを正常化すること」と考えられてきたとするが、そもそもその設定の是非も問いかけられます。編者自身の主催するプロジェクトがグローバリゼーションとジェンダーに焦点を当てる「ジェンダーのグローバリゼーション研究」でもあるため、ジェンダー・バイアスの視点を入れるなど、グローバル化の中での現代移民研究をめぐる新たな問題群についても提示されています。
なんだかとても暗い気持ちになってしまいましたが、今回の買取で希望を見出した点もご紹介しておきましょう。
当店では、お客様から買い取った書籍・CD・DVDなどの買取代金を子どものために活動する団体に寄付する「寄付買取(事業名:tetote(テトテ))・専用HPはこちら)という取り組みを行っております。
2006年からはじまり、今年でもう18年目となります。以下、提携団体様(敬称略)を列記いたしますと、
・あしなが育英会
・KAKECOMI
・CAPセンター・JAPAN
・交通遺児等育成基金
・セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
・フードバンク八王子
・ユネスコ・アジア文化センター
・ルーム・トゥ・リード・ジャパン
の8団体です。
それぞれ、遺児への支援や子どもへの暴力根絶のため、教育インフラの改善など、国内外で困窮する子どもたちに精神的・物理的な支援を行っている団体様です。
※それぞれの団体についての活動内容等の詳細については以下のページをご参照ください。
今回のお客様はこちらの「寄付買取」をご利用いただいておりました。ありがとうございます!買取額はご指定の団体様に振込完了し、お売りいただいた本は次の必要な方に繋げるべく、Amazonなどを通じて再販しております。
「何か人の役に立つことをしたいけど何をしたら良いかわからない」という方に好評いただいている取組です。
寄付買取でのご売却をご希望の方は、当店お申込みフォームからお進みいただき、「代金のお受け取りについて」の欄で「寄付」にチェック、その下の欄からご希望の寄付先をお選びください。
貴方の読まなくなった本が、どこかの誰かの笑顔に変わるかも知れません。
今回の高額買取品
下表は今回の買取で1冊200円以上の買取額をつけさせていただいた本の一覧です。似たジャンルの蔵書のご売却をご検討中の方はご参考まで。ISBNのない本でも買取歓迎ですよ!
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(買取額は市場の需要と供給のバランスにより変動するため、現在とは異なる可能性がございます。上記は2024.07.30時点の金額です。)
今回も良書をたくさんお売り頂き、誠にありがとうございました!
スタッフN