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スタッフブログ 買取日記

2025/10/17

広東語教材・香港文化に関する書籍の買取

今回は香港・広東語をテーマとした書籍をお譲りいただきました。

広東語学習に関する教材や辞典を中心に、語学愛好家や研究者にとって専門性の高いタイトルが数多く含まれていました。

こうした語学書と並び、香港という都市そのものを切り取った文化・写真関連書も含まれており、現地の暮らしや風景を知るうえでも興味深い内容です。

その中から、こちらの1冊をご紹介いたします。

香港 路面電車の旅 トラムには香港のすべてがみえる窓がある

『香港 路面電車の旅 トラムには香港のすべてがみえる窓がある』永田 幸子 文・小柳 淳 春陽堂 2004年

 

100周年を迎えた香港の路面電車 トラム

香港島北岸を東西に走る二階建ての路面電車、トラム (見開き・あとがき頁より引用)。この電車の運賃は、均一で大人2香港ドル。日本円で30円弱という交通費で乗車可能な、香港市民の交通手段の1つともいえる乗り物です(“我愛電車)

2004年、トラムの開業100周年という記念すべき年に刊行された本書では、東端のターミナル・筲箕湾(さうげいわん)に始まり、西の堅尼地城(ケネディタウン)に到着するまでの各地域に焦点を当て、街々の写真を収録しています。

本書を企画されたのは写真家の永田幸子さんと、香港ライターの小柳淳さん。永田さんは1993年から香港・マカオの撮影を開始。主に風景や子ども、人々の生活を中心に写しています(著者紹介頁)。実際に本書でもトラムから見た香港の風景、そして市民の生活の一部分がクローズアップされており、現地の空気を感じられる構成になっていると思います。

小柳さんは香港の街に魅了されて以降、何度も足を運び、香港の観光から歴史、産業といった事柄を文章で発表されている方(同上)。また、吉祥寺で主に旅行や国に関連した書籍を豊富に取り扱う書店『街々書林』を開店されています。

(余談ですが私自身、以前 吉祥寺に出かけた際に本店にお邪魔した事があります。香港関連の書棚の前で、初めて出会う本・雑貨の数々に感動していたところ、小柳さんから香港や関連書籍にまつわるお話をお聞きしました。とても気さくなお人柄で、楽しい時間を過ごすことが出来ました。)

 

窓に映るは香港の暮らし

本書を読み進めていくと、トラムが走る各地域の特色、香港のシンボルやイメージが現れてくるように思います。デパートにブランドショップ、店舗が空いては埋まる個人営業の店が連なり、幾多もの印象強い看板がトラムの頭上を通り過ぎる繁華街・銅鑼湾(コーズウェイベイ)。夜の海にも浮かぶほど煌々とした湾仔(わんちゃい)のネオン、一転して中環(セントラル)に広がるのは、香港と世界を繋ぐビジネス街、などなど…。

繁華街・銅鑼湾(コーズウェイベイ)

一方で新旧の建物と、高い人口密度を誇る香港の土地に暮らす個人にも目を向けられている気がしてなりません。結婚式や卒業に顔を綻ばせる市民の人生の節目が見えますし、店先で肉を捌き運ぶ人、あるいは信号待ちの会社員といった多様な職種があることを改めて考えさせられます。まさに、永田さんの主流とする 人々の暮らし”を中心とする撮影スタイルが存分に発揮されているのではないでしょうか。

人々の暮らし

トラムが纏うもの、生み出す速度

さて、本書では香港の街と市民に加えて、1949年使用開始の一二〇號など、トラムそのものを取り上げた項目も。そのうちの1つが、車体を使った電車広告。トラムごとに異なる広告が読者の目を惹きます。

路線が香港繁華街ばかりを通り、運転速度がゆっくりなのが広告には有利だ。(…)最近では車体広告に電飾を追加した、光る広告電車も現れた。停留所の広告も新デザインが増え、カラフルさを増している。(“電車広告”頁)

小柳さんの解説で述べられている電飾の広告電車は、実際に写真で鑑賞可能です。ちなみに、それまでは部分的に車体に収まっていた広告は、80年代からは車体全面を用いたものに変わり、再度分割広告が登場して以降、両者が混在する形になったとのこと。トラムが纏う豊富な広告と、その歴史に注目してみるのも面白いと思います。

また、堅尼地城の1つ前の停留所・石東咀(せっとんちょい)も取り上げられており、ここはいわば電車が疲れを癒す場(“石東咀”頁)。工員の検査・修理によって車体が整備される様子が撮影されています。このページを読んで、これまで見てきた街の路線上での姿とは異なる、運行に向けた作業の結晶が集まった印象を受けました。

これまでトラムの概要、外装や整備について触れてきましたが、その魅力についてこのような一文があります。

でもデータに表れない本当の魅力は、ゆっくり車窓を過ぎ行く街並を、ぼんやり眺める時間を持つことが心地好いことにあるのではないだろうか。(“ゆっくりの魅力”頁)

永田さんによる写真群を遡ると、そこには共通して人々の活気が香港を駆け巡っていたかのように思います。その中をゆっくりと走るトラムには、香港の街中の速度との対比を生み出す魅力があると感じました。私は香港にはまだ行ったことはありませんが、現地で乗って、その速度を体感したいです。

変化し続けるこの地で100周年を迎え、今日も走り続けるトラム。本書を通して、これから先も、その車窓に鮮やかな香港が映ることへの願いを抱きました。

今日も走り続けるトラム

 

 

ISBN タイトル 査定額
4497210014 身につく広東語講座(CD2枚付) 2010年発行 255円
4130860364 香港・日本映画交流史: アジア映画ネットワークのルーツを探る 2007年発行 255円
4048990683 香港ストリート物語 2012年発行 260円
487615595X 香港・広東語会話決まり文句600 CD版 1998年発行 295円
4891745428 香港粤号(語彙とリスニング1)CD付 2002年発行 300円
4048946773 啓徳懐想 香港国際空港物語 2008年発行 300円
4891746416 広東語初級教材 香港粤語 基礎文法〈1〉 2004年発行 480円
4891745754 広東語中級教材 香港粤語 応用会話(CD2枚付) 2003年発行 480円
4863980949 広東語初級教材 香港粤語 基礎会話(CD-ROM付) 2012年発行 500円
4497205088 東方広東語辞典 2005年発行 1360円

買取額は市場の需要と供給のバランスにより変動するため、現在とは異なる可能性がございます。上記は2025年9月時点の金額です。

ノースブックセンターでは、今回のように広東語をはじめ、各国の言語や文化理解に関する専門書も積極的に買取しております。

語学教材や辞典、研究書などの整理をご検討の際は、ぜひ当店にご相談ください。

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