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スタッフブログ 買取日記

2026/09/25

社会学関連書籍の買取

今回は、社会学関連の書籍をお譲りいただきました。その中から、気になったこちらの1冊をご紹介いたします。

クリスティン・ヤノ;久美薫 訳 2017『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか?:”カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター』作品社

 

はじめに

 今回は、クリスティン・ヤノの『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか?:”カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター』をご紹介します。

 本書は、サンリオの人気キャラクター「ハローキティ」を題材としながら、日本発の「カワイイ」文化が世界へと浸透していく現象を分析した一冊です。ハローキティを題材に、消費文化、グローバリゼーション、ジェンダーなどの問題を読み解いていきます。

 

小さな贈り物がつくるつながり

 サンリオ創始者の辻信太郎は、「なかよし」や「しあわせ」を重視し、「スモールギフト、ビッグスマイル」という理念を掲げています。高価な品ではなく、小さな贈り物の交換によって人間関係を築くという考え方です。本書では、この理念が日本の「お中元」や「お歳暮」といった贈与文化とも結びつき、サンリオ独自のコミュニケーション文化を形作ったと論じられています。

 ハローキティの商品は幅広く展開されながらも、どこか「テヅクリ」らしい親しみを残しています。多彩なデザインで人々の暮らしに取り入れられると同時に、人と人をつなぐ贈り物であり、「カワイイ」を示す記号としての側面も持っています。

 

「ピンクのグローバリゼーション」とは

 本書の中心的な概念が「ピンクのグローバリゼーション」です。ここでいう「ピンク」は単なる色ではなく、かわいらしさや少女文化と結びつけられてきた商品・感性を表します。日本のキャラクター商品や「カワイイ」の感性が、流通やメディア、消費者を通して国境を越えていく過程を、ヤノはこの言葉で捉えています。

 本書では、この動きを文化が西洋から非西洋へ広がるという一方向的な見方とは異なる視点から分析しています。ただし、著者はそれを日本文化の一方的な広がりとして単純には描きません。ハローキティは日本で生まれた意味をそのまま保って輸出されたのではなく、各地域の消費者によって選び取られ、それぞれの文化や社会状況に応じた意味を与えられてきました。企業による世界的な商品展開と、受け手による再解釈の双方から文化が広がる点に、「ピンクのグローバリゼーション」の特徴があります。

 また、日本のポップカルチャーでは、「かわいい」と「かっこいい」、「女性らしさ」と「男性らしさ」が必ずしも対立しません。本書が「ジャパニーズ・キュート=クール」と呼ぶこの柔軟さも、ハローキティが異なる文化圏へ入り込む一因として論じられています。

 

ハローキティをめぐる多様な解釈

 ハローキティには口が描かれていません。サンリオは、見る人が自由に感情移入できるようにするためだと説明しています。また本書では、ハローキティの表象をめぐり、ジェンダーや文化的イメージなど、さまざまな観点からの議論が紹介されています。

 その一例として、ハローキティはパンクやLGBTQ+などの文化において、「カワイイ」やピンクのイメージを別の形で解釈する象徴として用いられている事例が取り上げられています。

 また、「女児向け」「無害」「従順」といったイメージと結びつけられてきたピンクやカワイイの記号を、受け手があえて身につけることで新たな意味を与えていくあり方にも触れています。著者はこうした実践を、誰が何を好み、どのように装うかといった点について、従来の価値観に新たな解釈を加えるものとして捉えています。

 ヤノは、こうした実践を「ウィンク・オン・ピンク」と表現します。ピンクやカワイイを拒絶するのではなく、その意味を茶目っ気とともに使い直し、自己表現や仲間とのつながり、社会的なイメージや価値観について、新たな解釈を生み出すものとして紹介されています。同じキャラクターが、ある文脈では特定のイメージと結びつけて批判的に論じられ、別の文脈では異なる意味を持つ存在として受け止められる。この両義性が、ハローキティが多様な文化圏で受け入れられてきた背景の一つとして考察されています。

 英語版と日本語版で大きく異なる表紙からも、文化圏による受け取られ方の違いがうかがえます。

 

 

 

おわりに

 本書は一見すると、人気キャラクターを扱ったファン向けの書籍のように見えます。しかし実際には、第三波フェミニズムやカルチュラル・スタディーズの議論も踏まえながら、「カワイイ」という文化から消費社会、ジェンダー、グローバリゼーションを横断的に考察した研究書です。

 ハローキティは、企業が世界へ販売した商品であるだけでなく、受け手によって新たな意味を与えられてきた記号でもあります。日本の日常に溶け込んだ一つのキャラクターが、なぜ国境や世代、ジェンダーを越えて愛されてきたのか。本書は、その背景を文化の移動と再解釈の過程から考察しています。

 

今回の高額買取商品一覧

ISBN タイトル 出版年月日 買取価格
4863390173 多声性の環境倫理―サケが生まれ帰る流域の正統性のゆくえ 2010/3/31 300円
4871985601 大指揮者 カール・シューリヒト 生涯と芸術 (叢書・20世紀の芸術と文学) 2009/2/12 310円
4874248926 オンライン国際交流と協働学習: 多文化共生のために 2022/3/3 330円
4000040650 ローカル・ノレッジ: 解釈人類学論集 (SELECTION21) 1991/4/23 340円
4822285391 データを正しく見るための数学的思考 2015/7/1 350円
4938844532 人生の再著述: マイケル、ナラティヴ・セラピ-を語る 2000/10/25 380円
4813319068 シリウスの都飛鳥: 日本古代王権の経済人類学的研究 2005/10/1 510円
4861825938 なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか?――“カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター 2017/4/29 570円
4916087682 映画と身体/性(日本映画史叢書 6) 2006/10/1 775円
4903690520 なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか: 世界的貧困と人権 2010/4/1 900円
4790715493 現実批判の人類学― 新世代のエスノグラフィへ 2011/11/30 1,195円
4818818208 経済成長と所得分配 2006/2/1 1,200円
4775300253 ビザンティン帝国の軍隊: 886-1118ローマ帝国の継承者 (オスプレイ・メンアットアームズ・シリーズ) 2001/11/1 2,510円

買取額は市場の需要と供給のバランスにより変動するため、現在とは異なる可能性がございます。上記は2026年8月時点の金額です。

 

ノースブックセンターでは、今回のように社会学などの専門書も積極的に買取しております。

整理をご検討の際は、ぜひ当店にご相談ください。

今回も良書をたくさんお売りいただき、ありがとうございました!

スタッフT

 

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