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2022/04/04

社会学・哲学・歴史などに関する書籍買取 「生き方の人類学―実践とは何か (講談社現代新書)」2003年、講談社

今回は社会学、哲学、歴史などに関する書籍を中心とした人文学系の書籍多数を買取させていただきました。以下に特に良い査定額をおつけできたものを紹介します。

「全体主義 (平凡社新書)」
「生き方の人類学―実践とは何か (講談社現代新書)」
「写真の読みかた (岩波新書)」
「翻訳 訳すことのストラテジー」
「グローバリゼーションと暴力―マイノリティーの恐怖」
「ライフストーリー論 (現代社会学ライブラリー7)」
「通天閣 新・日本資本主義発達史」
「ナチスのキッチン」
「遠近の回想 増補新版」
「解釈人類学と反=反相対主義」
「なぜ科学を語ってすれ違うのか――ソーカル事件を超えて」
「歴史の島々 (叢書・ウニベルシタス)」
「人口の世界史」
「トランスレーション・スタディーズ」
「狩猟採集民からみた地球環境史: 自然・隣人・文明との共生」
「歴史・レトリック・立証」
などなど。

社会学に関連する思想につながる内容が多い感じですが、上記を見ると翻訳に関連するものもありますね。また、毛色の違うものとして「写真の読みかた (岩波新書)」もあります。こちらは元々1963年に初版が発行されたものを2004年に復刊したもので、日本の報道写真の草分け的存在、名取洋之助の著書です。写真の芸術性よりも報道としてのメッセージ性を重視した名取氏。そのため、どちらかというと写真という芸術の分野の本というよりメディア論に近いような内容です。が、あの木村伊兵衛なども氏の来歴について筆を執っている部分もあり、写真ファンが読んでもなお面白い内容かと思います。

上記リスト中の本はほとんどが比較的最近発行された本でしたが、このように古い本でも高い人気があるものは良い査定額が付くこともあります。「どんな本が高く売れるのか分からない!」という方、当店では本を実際にお送りいただく前に買取額の概算が分かる事前見積(無料)も承っておりますので、お気軽にご利用ください。

 

さて、すっかり「写真の・・・」の話になってしまいましたが、ピックアップする本はこちらではありません。

今回選んだのはこちらの本。

「生き方の人類学―実践とは何か (講談社現代新書)」2003年、田辺繁治 著、講談社

著者は田辺繁治氏(1943年-)。国立民族博物館の名誉教授です。民族博物館の氏のプロフィールを拝見すると、専攻が4項目並んでおり、その上から3つ

  1. 北タイの仏教および霊媒カルトの研究
  2. タイのHIV/AIDS自助グループの研究
  3. 実践知 (practical knowledge) の理論的研究

について本書では触れられております。

ここでは3番目に挙げられる形とはなっていますが、「「実践知」が何であるかを解明すること」「実践と社会との関係を明らかにすること」が氏の学術的なベースとなる問題設定になっていることは、本書を読めば明らかです。

著者が序章で指摘するように「実践」という日本語は非常に広い意味を持たされています。その語が著者の専門である人類学で使われる時、または心理学分野で使われる時、文学的な文脈で用いられる時、それぞれの場合によって、その意味するところは時に微妙に、あるいは全く違ったニュアンスを持ちます。著者はまずそこを整理した上で「実践」とはなんであるかを、そして、私達の「実践」に内在するものとしての「知」、すなわち「実践知」とはどういうものであるかを述べていきます。

本書の構成としては、まずはじめに上記リスト3番目の項目「実践知」についての基礎的知識をまとめ、既存の考え方の限界指摘や疑問提起をします。具体的には第1章では主に哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの、第2章では主に社会学者ポール・ブルデューの、第3章ではジーン・レイヴとエティエンヌ・ウェンガーの提唱した「実践コミュニティ」を詳解しています。

そして、第3章を引き継ぐ形で「実践」を身体に内在化させる場であるところの「実践コミュニティ」の例である北タイの霊媒カルト(上記専攻リストの1番目)を第4章で、タイのエイズ自助グループ(同リスト2番目)を第5章で取り上げます。

最後に第6章として、それらの「実践コミュニテイ」への参加は同時にアイデンティティを創り上げることに不可分な性質を持つことから、「アイデンティティと生き方」という壮大なテーマで本書を締めくくっております。

 

全体を読んで感じたのは、本書は長いキャリアを持つ著者の「実践」「実践知」に関する理論研究の結晶なのではないかということです。たいていの本は、文章の要約のためにどこかを省略しても意味が通じるものを作ることはできますが、こちらの本の特に第3章までは、その略すべき文があまり見当たりません。それほどまでに思考が凝縮されていて、濃いのです。人類学の本ではフィールドの描写に軸足を置くものはそこに徹底しており、解釈についてはある意味不親切である向き(意図的にそうしている研究者もいますし)すらありますが、こういった俯瞰的記述もセットで、しかも、この容量(全261P)に収まっている、おまけに新書サイズの本というのは大変貴重なのではないかと思います。

そして、社会学や人類学が「社会関係」や「権力」、「アイデンティティ」という語を用いる時に漂いがちな、どうもがいても逃れられない結論めいたものも、著者の筆致からはあまり感じられません。第4章や5章のコミュニティの現実は易しいものではないとは思いますが、その現実を覗いた上で「(コミュニティとは)自らの実践がもつ意味を考えながら自らの倫理的な転換の可能性を追求し続けることである。(序章より)」とただ反復を繰り返すのではなく、そこから革新が生まれるのだとする考えは非常に格好良いと思いました。著者が自ら「読後に序章はもう一度読んでほしい」と書いているように、この全体の「水先案内」でもある序章は著者の人格、学者としての思いが込められている傑作だと思われますので、ここだけでも読む価値アリです!

そして、表紙を見るだけでは「ウィトゲンシュタイン」「ブルデュー」のビッグネームがまず飛び込んで来がちですが、題字左に配置された赤地のファブリックの正体、こちらはタイの織物なのだそうです。こういったところにもフィールド研究も大事にする心憎さを感じました。

今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!

スタッフN

 

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