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2022/04/28

精神医学・心理学に関する書籍の買取 「「ポリヴェーガル理論」を読む -からだ・こころ・社会-」2019年、星和書店

今回は精神医学や心理学に関する書籍の買取をいたしました。以下に特に良い査定額をお付けできたものを紹介します。

「「ポリヴェーガル理論」を読む -からだ・こころ・社会-」
「レジリエンスを育む―ポリヴェーガル理論による発達性トラウマの治癒」
「認知行動療法実践ワークショップⅠ ケースフォーミュレーション編(1)」
「トラウマによる解離からの回復: 断片化された「わたしたち」を癒す」
「力動的心理査定―ロールシャッハ法の継起分析を中心に」
「解離性障害―多重人格の理解と治療」
「ロールシャッハ・テスト講義〈1〉基礎篇」
「認知療法・認知行動療法カウンセリング初級ワークショップ―CBTカウンセリング」
「子どものための精神医学」
「スクールカウンセリング モデル100例:読み取る。支える。現場の工夫。」
「精研式文章完成法テスト解説 成人用」

などなど。

以前にも同じようなジャンルの本の買取を本ブログで紹介させていただきましたが、その時と違っていた点は書籍の出版年でしょうか。今回は2000年を過ぎてから出版された比較的新しいものが多かったです。そのため、コンディションも非常に良いこともあり高額査定となりました。

一般医学書ですと出版年から長い時間がたつとその価値が落ちてしまうものが多くある中、上記前回事例を見ると心理学や精神医学の世界では、その法則が一部当てはまらない部分もあるのかなと思います。ただし、他の医学書(例えば、東洋医学や、新説がないもの、類書のないもの)にも古いもので良いお値段が付くこともままありますので、ご不要の医学書をお持ちの方は是非、当店までお譲りください。次に使う方が今か今かと待ち構えているかも知れません。

さて、そんな中、今回ピックアップする本は3年前に出版された古本業界隈では「できたてホヤホヤ」なこちらの本

「「ポリヴェーガル理論」を読む -からだ・こころ・社会-」(2019年、津田真人 著 、星和書店)

です。まず、査定額からいうと、今回お譲りいただいた本の中では一番高値で1,000円以上が付きました。

しかし、、、「ポリヴェーガル理論」、この用語、聞いたことありますか??

恥ずかしながら自分は出会ったことのない言葉だったのですが、精神医学の臨床家の中で最新のトラウマ理論の1つとして注目されているようで、実際に関連図書が最近次々と刊行されています。

 

ポリ=たくさんの 

ヴェーガル=迷走神経

 

なので、「ポリヴェーガル」は直訳してしまえば「多重迷走神経」ということになります。人間の自律神経には交感神経と副交換神経がありますが、この副交感神経の80%を占めるのが迷走神経です。その迷走神経も従来考えられてきたような1つのものではなく、腹側迷走神経複合体と背側迷走神経複合体の2つがあり、それぞれが違う機能を持つがゆえに、どの神経複合体が優位に働くかにより人間の生理学的、精神学的反応に差異が生まれるというもの。また、その2つの複合体の存在を仮定したときに、それまでには説明のつかなかった生理学・精神学的な人間のリアクション(トラウマや乖離、PTSDや各種不安障害、うつのメカニズム)の理屈が理解できるというのです。そういった性質から、この理論のベースをおさえることにより精神医学臨床に役立てられると注目されているわけです。

 

先程、こちらの本は2019年発行で「できたてホヤホヤ」だと書きましたが、実はこの「ポリヴェーガル理論」自体が初めて世に発表されたのは、そこまで最近のことではありません。1994年にステファン・W・ポージェスという行動神経科学者(これがどういう分野を研究する学問なのかはまた込み入った説明が必要となるので、ここでは割愛いたします。)が精神生理学会講義において提唱したのが始まりと言われています。

ただ、このポージェスの理論は2011年に大著「Polyvagal Theory」が出版されるまでの長い間にポージェス自身の考えも前後したり、この原著の中で時系列がいったりきたりすることもあり、体系的に理解が進んでいない現状がありました。

今回の本はこの「Polyvagal・・・」の訳書ではありません。その提唱者自身が発刊した著書自体からも理解が難しい理論をあらためて整理し、しかもありがたいことに日本語で(原著はネイティブであっても理解が難しいらしいです。)わかりやすくまとめています。

とはいえ、先程書いたように心理・精神臨床ですぐに使えるような「即効性」のある理論としてのポリヴェーガルがこの本で紹介されているかというと・・・、かなりイメージと異なることは否めません。この理論は単なる一過性や流行のヒーリング法や「トンデモ理論」ではないのです。

ポージェスの肩書を「行動神経科学者」としましたが、元々彼は人間の心理状態を生理学的な測定によって理解することに関心を抱いており、その具体的フィールドとして研究対象としていたのは心臓でした。それゆえ、ポリヴェーガル理論の下地には「医学」という科学的な下地があり、しかし、それゆえに理解には生理学や神経解剖学などの専門的知識が必要とされ、それがこの理論が一般的に広がることを妨げている一因ともなっています。

 

この神経解剖学的な知識については本書の3章から4章にて詳解されています。私はこの章まではじっくり読みましたが・・・うーん、難解です。そして、所々挿入されるコラムも、コラムらしからぬ専門性と広い範囲を持ち、著者の脳みその方がどうなっているのか見たいわ・・・とも思ってしまう内容に圧倒されます。

しかし、普通の医学書とは違い、筆者の書き方がかなり砕けているため、それでもこの手の本の中では最大限に分かりやすいと思います。

 

著者はポリヴェーガル理論がどういうものか知りたいのであれば、さしあたり1-9章の注釈は飛ばして本文を読むことで足りるとしています。とりあえず、原著「Polyvagal Theory」が難解だという理由で挫折した上で「でも、ポリヴェーガル理論について知りたいんだ!」という方がいるならば、本書は避けて通ることができない本のように思われます。未だにこの理論をわかりやすくまとめた著作自体が少ないのが現状ですので…。

なお、著者が一番主張したがっている古いタイプの精神医学臨床の世界が「身体」と「こころ」の二項の繋がりは重視するものの、そこに「社会」という視点が欠けており、この3者の繋がりを包括的に視野に入れるべきだとの主張については、後半の10章以降に凝縮されている(本書のサブタイトルにもなっています)と思いますので、臨床家の方はここまで粘り強く読み進められることをオススメいたします。

 

2022年3月に同じ著者がポリヴェーガル論についてもう少しライトな著作を出されているようなので、そちらと合わせて読めばポリヴェーガルは完璧!ではないでしょうか。

今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!

スタッフN

 

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