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2022/05/13

物理学など理工学系書籍を中心とした買取 「一般相対性理論 (物理学選書 15) 復刊」 2001年、裳華房

今回は熱力学や通信などの工学系、それに関連する数学などの書籍を中心とした買取をいたしました。以下に特に良い査定額をお付けできたものを紹介いたします。

「Electrodynamics of Continuous Media: Volume 8 (Course of Theoretical Physics)」
「大学演習 熱学・統計力学〔修訂版〕」
「やさしく学ぶ 第一級陸上特殊無線技士試験 改訂2版」
「新装改訂版 バイタル柔道 -投技編」
「新明解国語辞典 第八版 青版」
「コンパスローズ英和辞典 [並装]」
「漢字源 改訂第六版」
「よくわかる熱力学」
「信号・システム理論の基礎―フーリエ解析、ラプラス変換、z変換を系統的に学ぶ」
「World Radio TV Handbook 2022 : The Directory of Global Broadcasting: The World’s Most Comprehensive and Up-To-Date Guide to Broadcasting」
「一般相対性理論 (物理学選書 15)」
「熱力学の基礎 第2版 I: 熱力学の基本構造」
「Phaselock Techniques」
「フルディジタル無線機の信号処理 (RF Design Series)」

などなど。

上記リストにある書籍はすべて一冊あたり400円以上の査定額となったものです。ちなみに、一番高い査定額となったのは「World Radio TV Handbook 2022~」です。こちらはなんといっても、その新しさが高額となった要因と言えます。

古書の世界では「古い本に骨董的価値が出て、高い値段で取引されている」というイメージを持たれる方もいるかも知れません。しかし、それは本の内容がどのようなものであるかに依存します。例えば、医療技術や経済事情など最新の情報でないと役に立たないといったような本の場合、古くなれば当然その値段は下がってしまいます。既述の「World Radio ~」もそうですが、上のリスト内でいえば一般的な「辞書」や「事典」などもそういったものに含まれるかも知れません。このように定期的に新版が発売されるジャンルの本は新版が出ると、旧版は買取が難しくなります。ご売却の際のご参考にしてくださいね。

また、上記リストをご覧になるとお分かりのように、今回は洋書も含まれておりました。英語で書かれたもののみにはなりますが、当店では洋書の買取も積極的に行っておりますので、ご自宅にご不要の本がございましたら是非、お譲りください。

 

さて、それでは今回ピックアップする本の話に移りましょう。今回はこちらの本にしました。

「一般相対性理論 (物理学選書 15)」(2001年 13版、内山龍雄 著、裳華房)

です。

はい、もう説明の必要はありませんが、アインシュタインが1915-1916年にまとめた「一般相対性理論」について書かれた本です。

こちらは「復刊」版であり、初版は1978年に発行されています。そして、写真に写っているのは2018年の13版15刷です。初版から40年経っていますが、名著はいつになっても価値が高いことのお手本のような本ですね。

1905年にアインシュタインがこれまでの観測的事実から光速度不変の原理に立脚し、「特殊相対性理論」において「時間と空間は物体の状態によって伸び縮みするというような相対的な概念である」ということを唱えました。これは、それまでの時間と空間は絶対的に不変であるとしたニュートン力学を根底から覆すセンセーショナルなアイディアでした。

そこから10年、そこに「重力」を考慮に入れた理論である「一般相対性理論」(「特殊相対性理論」は、本当はそこにあるはずの「重力」が存在しないという「特殊」な状況下を想定した理論でした)を発表、ここで「重力とは時空の歪みである」と論じました。これは別の言い方をすれば「重力というものが物質同士で完結する力ではなく時空を介して作用する力である」ということで、「重力は質量を持つ物質同士に働く力だ」としたニュートン力学と、またしても全く異なる考え方でした。

そして、この「一般相対性理論」を宇宙全体を貫く法則として適用させたアインシュタインが達した宇宙像は「この宇宙は膨張するか収縮するかのどちらかでしかない」のであるという、彼自身にとっても非常にショッキングな結論でした。

この「膨張する宇宙」「動的な宇宙」像が、現在は誰でも知っているビッグバン宇宙論の出発点にもなるのですが…それはここでは割愛します。

 

今回紹介する裳華房の「一般相対理論」はそのアインシュタインの原著の訳出ではなく、日本の物理学者、内山龍雄が以前自身で著した「一般相対性および重力の理論」(1967年、内山恭彦・中野董夫・山内 共著、裳華房)を大幅に書き直したものです。そして、「特殊相対性理論」については一切の説明を排除しており「一般相対性理論」にのみ的を絞っています。

そして、残念ながら、本書は一般の読者に向けた「相対性理論」の入門の本ではありません。出版社の本書紹介ページには「本書を理解するには、特殊相対性理論に関する大体の知識さえあればこと足りる。テンソル解析にしても、スピノール算にしても、本書の理解に必要な道具はすべて本書に解説してある」としていますが、そもそもの「特殊相対性理論に関する大体の知識」が一般レベルではなく、少なくとも文系の人間(私のような)が上に書いたようなざっくりした理解だけでは、目の前に揃えられた道具に間違った触り方をして怪我をするような痛い目を見ますので、ご注意ください…。逆にある程度以上の知識があれば、より「一般相対性理論」を深く理解できる良き教科書となるということで、物理を専門的に学ぶ人にとっての本格的な入門書という位置づけになります。

 

1967年の前書と大幅に違う点として、著者自身が序文に書いているのは「ブラック・ホールの問題と関連して近年注目を集めるようになったKerrの解をプラスした」ことで、これはアインシュタインの「厳密解のひとつであり、特に注目に値する」としています。

また、第8章におけるトピック、特に「スピノール算について用いた時空の分類は外国の教科書でも稀だと思われる」と特徴を述べています。

今まで物理学や数学の書籍を読んでいて、その著者の性格のようなものは数式の間に埋もれてしまっていて見えないことが多いと感じていたのですが(数学や物理の専門家の方たちはきっと感じ方が違うのでしょうが)、この著者は所々に「俺、すごいだろ」という溢れる自信がうかがえるニュアンスを挟んでくるのも特徴的だと感じました。

その自信を特に感じるところが「第10章 重力場の理論の正準形式」について触れた文章で、「この形式の開拓者であるDiracより明快で説得力がある」と言い切っています。

この内山氏の人柄が垣間見える文章に興味を持った方が楽しめそうな「龍雄先生の冒険 回想の内山龍雄:一般ゲージ場理論の創始者」(2019年、窮理社。最近発行ですね!)なんていう本も出ているようですので、参考までに。

私は物理学にしっかり触れたことのない人生を送ってきましたが、本書で物理学は「時間および空間というワク、数学的にいえば4次元連続体のなかにおける対象の配位の変化という形ですべての現象を記述する。」(P5)ものだというと簡潔かつ明瞭な説明を読んで、「ああ、こんな先生に高校時代に出会っていたら物理ができるようになっていたのではないか」との錯覚(苦笑)を持ちました。本書を数式で体感する専門家の方々が、この「腑に落ちる感じ」を氏と、さらには世界中の物理学者たちと共有できることが誠に羨ましいです。

 

最後に、本書が好評であるところの扱っているトピックの幅広さが分かる章構成をご紹介して、本記事を終えたいと思います。

第1章 一般相対性理論の基礎
第2章 テンソル解析
第3章 一般相対性理論的力学および電磁気学
第4章 重力場の方程式
第5章 不変変分論
第6章 重力波
第7章 Einstein方程式の厳密解 (※ここでブラックホール近くにおける光の振る舞い、質点の運動などが扱われる)
第8章 Einstein方程式の数学的性質
第9章 宇宙論への応用
第10章 重力場の理論の正準形式

 

今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!

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