2024/09/02
数学教育等の書籍の買取【97冊 10,635円】
数学を学び直したい
今回は数学のテキストや問題集を多く買取いたしました。
過去にも多く数学関連の専門書を買取して参りましたが、これまでは大学で使用する教科書(過去記事①、②参照。物理学のテキストと一緒にお売りいただくことも多いです)か、または大学受験用の問題集などが中心であったように思います。
しかし、今回のレパートリーは少し毛色が違っていました。
どう違っていたかというと、小学生向けの算数をはじめとする初等数学から大学数学などで学ぶ高等数学まで、数学という学問全範囲を“いかに教えるか”という数学教育についての本が中心となっていた点です。
この文章を書いている私(スタッフN)は、小学5年生の算数の時点で「おやおや?」と自らの中にその気配を感じ取り、中学生にて完全に自覚、高校においては敵前逃亡を果たした“ザ・数学音痴”ですが、数学そのものに興味がないわけではないのです…。
今回の買取品を眺めていて、かつて“数学のすの字”を聞いただけで目を背けていた若かりし頃の自分に読ませてあげたいと思った本がありましたので、紹介していきたいと思います。
数学こそ、コツコツ思考することが大事
残念ながら当店では漫画・コミックなどは買取対象外(「買取できるもの・買取できないもの」のページ参照)なのですが、スタッフNは個人的に漫画も好きです。
最近読んだ漫画に絹田 村子さんの『数字であそぼ。』という作品があるのですが、高校生まではその天才的な頭脳で勉学に関しては何の苦労もなく過ごしてきた青年が主人公です。当然の如く超有名大学の、それも理系の学部に入学するのですが、なんと数学的なセンスが破壊的になかったことが発覚します。それまでに取り組んできた受験数学の問題は、彼の驚異的な暗記能力によって解けていただけだったのです。しかし、本当の数学は物事を暗記するだけではない、自らの頭を使った思考の積み重ねによって問題に向き合う学問だということに気付かされます。
作品では、自分の数学のできなさ具合にショックを受けつつも、面白おかしい学友たちに囲まれながら数学に取り組んでいく彼の様子がコミカルに描かれていくのですが、その中で「数学こそ、自分の頭を使ってコツコツ考えることが大事(大意。具体的なセリフについては、現在手元になくうろ覚えです。)」というメッセージがあるのですね。
哲学などの文系科目ほど“コツコツ思考”がモノをいう世界はない、数学なんて閃きがナンボの世界なんでしょ?!(=だから、センスがない人には永遠に解けない。できないなら最初から向き合わない方がマシ!)と思っていた私には、グサっときた言葉だったのでした。
論理的思考とは疑うことに始まる・・・?
そんな“コツコツ思考”ですが、何もないところでいきなりコツコツしろ、と言われてもできませんよね。
そのような思考のクセをつけるべき箇所の提起を行ってくれる本として、こちらの本を紹介したいと思います。
『論理思考力トレーニング法気がつかなかった数字の罠』 マリリン・V・サヴァント著,東方 雅美 訳,2002,中央経済GP
です。
こちらの本の著者は世界最高のIQの保持者としてギネスブックにも登録されたマリリン・V・サヴァント氏。
(ちなみに、この名前を聞いた瞬間、私は「サヴァン症候群」を思い浮かべたのですが、この症例の名付けのきっかけになった論文の発表は1880年代と意外に古く、1946年生まれのサヴァント氏とは何の関係もありません。)
その世界最高たるIQの具体的数値は一体どのくらいなのかと非常に興味があったのですが、本書の中にその記述は見つけられませんでした。一説によれば、その測定方法の是非について意見が分かれており、報告されている数値は各測定法によりマチマチなのだそうです。が、ギネスにはそのうちの「304」という数字が採用されている模様。金田一少年もびっくりですね。
さて、このサヴァント氏ですが、アメリカ全土で発行されていたライフスタイル、エンターテインメント、ニュース、インタビューなど幅広いテーマを扱っている雑誌『Parade』誌に「Ask Marilyn (マリリンに聞いてみよう)」というコラム連載をもっていました。
このコラムは読者から寄せられる科学的なパズルや謎、論理問題、数学的なクイズなど、知的好奇心を刺激する質問に彼女が答える形式を採用しており、大変な人気を博していました。
そして、そのコラムと彼女自身の名声を特に知らしめることになったのが、「モンティ・ホール問題」です。「モンティ・ホール問題」について詳細を書くと長くなってしまうので割愛しますが、ざっくり書きますと、当時アメリカで人気のあったテレビ番組(モンティ・ホールはその司会者の名前)のゲームにおける“勝つ確率”を扱ったパラドクスです(よろしければwikipediaの記事をどうぞ。)。
コラム内で彼女が導き出した解答は、多くの人の直感的にはとても正しいと思えないものでした。そのため、一般読者からはもちろん、大学で数学を教えるような専門家からまでも「彼女は間違っている!」という批判が殺到します。ですが、サヴァント氏はそれらに対して論理的に説明を重ねていき、最終的には彼女の考え方が正しいことを証明するのです。
この「モンティ・ホール問題」にまつわる一連の流れや具体的な批評については本書の第一部に詳しく掲載されていますので、そもそもの問題の詳細が知りたい方や、なんとなく「モンティ・ホール問題」について見聞きしたことはあるものの腑に落ちないままになっている方などがいらっしゃいましたら、是非、本書をお手に取ってみてくださいね。
なお、本書の第二部では、「モンティ・ホール問題」のように一度その答えが「こう」だと思い込んでしまうと抜けられない、確率や統計の誤謬について掘り下げが行われ、第三部ではここまでで紹介してきた“人々の騙されやすさ”と政治を絡め、様々な手法で民衆を惑わす政治家たちの論理の問題点や民衆の危うさを論考した政治論が展開されています。
いずれにせよ、本書の大きなテーマとなっているのは、「直感的にはこう考えられる(=思い込んでいる)けれど、本当にそれはそうなのだろうか?」という予断を排した疑いから“コツコツ”理論的な考察を積み重ねることで答えを導き出すことが大切だ、ということです。
思考停止に陥らないために
先ほどの「数学こそ、コツコツ思考することが大事」という見出しに反するようですが、本来的には論理的な思考に文系・理系の区別があって良いわけはありません。
あくまで今回ご紹介の本ではその方法として数学的な視点を中心に据えた書かれ方をしていますが、数学が関連する論理的思考トレーニングを扱った本以外にも今、人気が集まっています。
例えば、過去に買い取らせていただいたこともある『論理トレーニング101題』(Amazonの商品ページに飛びます)などもオススメです。
SNSで玉石混交の情報が飛び交う昨今、デマゴーグに流される人々がいる一方で、溢れくる匿名意見に流されないよう「ちょっと待て?!」と危機感を持っている方も多いのかも知れませんね。
まさに人の意見や、権威のある本の意見に流されて思考停止になりがちな筆者は、ひとしきり反省したのでした…。
「モンティ・ホール問題」とベイズ統計
さて、上でご紹介した「モンティ・ホール問題」ですが、トーマス・ベイズによって提唱されたベイズ統計の導入問題としてよく引用されます。
実は、こちらのブログでも過去にベイズ統計の書籍を紹介(「完全独習 ベイズ統計学入門」小島寛之 著、2015年、ダイヤモンド社)したことがあったのですが、こちらの解説を読んでも「モンティ・ホール問題」の「一見腑に落ちない結論」もスッと受け入れることができますので、オススメです。
ほかSEG出版の問題集なども買取歓迎!
あっという間に紙幅が足りなくなってしまいました。
本当はSEG出版(SEGとは「科学的教育グループ(Scientific Education Group)」の略で、理数系科目を中心とした中学生・高校生対象の学習塾、予備校のこと。東京都内の私立上位校の生徒が多数在籍し、単なる受験勉強の枠を超えて学問を深く理解し応用できる力を付けさせることに主眼をおいたテキストを多数発行しています。)の数学テキスト・問題集についても紹介したかったのですが、今回はここまで!
なお、問題集については解答欄に答えが書き込まれているものは買取対象外となってしまいます。また、別冊解答や解説などが欠品しているものも残念ながらお買取できません…。お売りいただく際には付属品の欠けがないか、ご確認ください。
今回の高額買取商品一覧
下表は今回の買取の中で300円以上の買取額がついたものの一覧となります。論理的思考トレーニングに関連した本や問題集のほか、認知心理学の立場から子どもがどのように数の概念を発達させていくかを論じた書籍なども数冊あり是非紹介したかったのですが、そちらもいつかまたの機会に…。
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(買取額は市場の需要と供給のバランスにより変動するため、現在とは異なる可能性がございます。上記は2024.08.19時点の金額です。)
今回も良書をたくさんお売り頂き、誠にありがとうございました!
スタッフN