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スタッフブログ 買取日記

2022/05/10

キリスト教などに関する書籍の買取 「夜と霧 新版」2003年、みすず書房

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今回買い取らせていただいたのは宗教関係、主にカトリック書籍を多数買い取らせていただきました。以下に特に良い査定額をお付けできたものを紹介します。

「新カトリック大事典〈第3巻〉」

「新カトリック大事典 [第IV巻] (ハク-ワン) <別冊 索引>付」

「新カトリック大事典〈別巻〉」

「ダンテ『神曲』講義 改訂普及版」 

などなど。

 

「新カトリック大事典」などは、元々の本体価格も高額でなおかつ状態もとても良かったので  4巻セットで4535円の高額査定となりました。宗教関係の書籍と一口に言ってもその範囲はとても広きにわたります。今回のカトリック関連の神学書など専門性の高いものは古いものであっても良いお値段を付けられることが多い印象です。聖書は「世界一読まれている本」と言われるだけあり、流通数が多いのでお値段がつかないこともしばしば。(ただし、その半面、希少性の高い版のものには例外もございます。)

また、神学などの宗教教義そのものについて論じたり、説明したりするいわゆる「宗教書」以外にも宗教の歴史に関連する書籍などにも良い買取価格が付く本が多数あります。

ご自宅に眠っている書籍がございましたら是非当店をご利用ください。

 

さて、今回ご紹介する本はこちら

「夜と霧  新版」(2003年、ヴィクトール・E・フランクル著 池田香代子訳、みすず書房)

です。

こちら本は買取をやっているとたびたび目にする1冊です。その理由に興味があり以前旧版を読んだのですが、今回は「夜と霧」の新版で、翻訳家さんが違ったのでもう一度読んでみました。ご存じの方も多いかと思いますが、読売新聞が2000年に行った「読者の選ぶ21世紀に伝えるあの一冊」のアンケート調査でも、世界の名著部門の第3位となった名作です。余談ですが、最近函付きの「夜と霧」にも巡り合ってしまいました(今回の一冊は函のない版です)。ちょっとテンションが上がりました(笑)

 

英語版だけでも900万部に及んでおり、日本語を含め17か国語に翻訳されているそうです。こちらの本は2003年発行のものとなります。

 

新版と旧版の違いの一つは翻訳者が違うということですが、そのため随分と印象が変わります。後半部分にある旧版翻訳者霜山氏のことばでも、「どうしても骨っぽい、ごつごつした文体になってしまう。それに対して新訳者の平和な時代に生きてきた優しい心は流麗な文章になるであろう。」と書かれています。まさにその通りと感じます。

 

そして本書が出版された経緯、著者の経歴、人柄の素晴らしさなどについて書かれており更に本への愛着が湧きます。先にこの部分を読んでからメインを読むという読み方もいいかもしれません。より切なくなるかもしれませんが。なんだかまた旧版が読みたくなってきます。

 

また、訳者あとがきに「霜山氏が準拠した1947年刊の旧版とこのたび訳出した1977年の新版では、かなりの異同があったからだとある。」とあります。少し触れると原著の旧版には「ユダヤ」という言葉が1度も使われていません。「フランクは記録に普遍性を持たせたかったから、そうしたのだろう。一民族の悲劇ではなく、人類そのものの悲劇として、自己の体験を提示したかったのだろう。」とあります。しかし、新版では「新たに付け加えられたエピソードのひとつに、「ユダヤ人」という表現が二度出てくる」とあります。改訂版の出た1977年の背景にイスラエル問題があるからではないだろうか。民族紛争とユダヤ人問題を重ねてみる部分があったのではないだろうか考察されています。個人的にはユダヤという言葉が解放された後にしか出てこないため、民族戦争ということをほとんど意識しないで読んでいました。なんだか新旧両方読んだほうがよさそうですね。

また、新版は若い人向けに出版されているそうで、個人的にも新版のほうがすっと頭に入り読みやすかったです。

 

内容ですが、心理学者である著者ヴィクトール・E・フランクによる悪名高いアウシュビッツ収容所における壮絶な体験記となっています。ちなみに表紙にある119104という番号は、著者の収容所番号です。著者は「被収容者が『心理学者として』強制収容所で働いていたのではない、ということだ。ごくふつうの被収容者が経験した収容生活を書き記すのが目的である以上、重要なことだ。」とありますが、やはり精神科医でなくてはこのような人間の観察はできなかったと思われます。

収容時のショック、収容生活の心理、収容所を解放された時の心理と大きく3段階に分かれて書かれています。ごく普通に生活していた人々が、突如人間としての尊厳をすべて奪われ、個ではなく番号で扱われるという理不尽。常に生命の危機と隣り合わせという追い詰められた状態での過酷な労働、発疹チフスとの闘いなどあらゆる状況の中でどうなっていくのか。そして運良く生き延びた人々が突然解放されるという状況にどのように対応していくのか、克明につづられています。衝撃的です。幸い著者は生死の分かれ目に何度も遭遇しながらも生き残り、メモを残し、時系列を追って書物に残すということができたわけですが、この書籍は奇跡に近いと思わざるを得ません。

 

昨今ロシア対ウクライナ戦争が激化していますが、人類とは何度同じ過ちを繰り返せば済むのか胸が痛みます。世界は民主主義に近づきつつあると感じていましたが、まだまだ独裁政権は顕在しているのかと改めて考えさせられました。日本は2022年で戦後77年となりますが、夜と霧を読み改めて戦争の残酷さ、平和について考えてみてはいかがでしょうか。

 

今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!

スタッフT

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